カールーラガーフェルドは、モード界随一の引き出しの多さを誇る。これまで、クロエ、クリッツィア、フェンディ、シャネルなどの老舗ブランドに引き抜かれ、次々にブランドの建て直しに成功してきた。それぞれのブランドの伝統の良さを生かしながら、控えめに時代の要素を盛り込んでいく。そのさじ加減は他のデザイナーの追随を許さない。コーディネーターの天才ともいえる。また、他人のブランドには天才的な再建能力を発揮するラガーフェルトだが、自分白身のブランドは今一つパッとしない。いろいろなブランドで良質なエッセンスを使いすぎて、自分のブランドにまで手が回らないとの評価も。まさにプロデューサー体質ともいえる。なお、長い金髪をポニーテールにしているのが彼のチャームポイント。そして、なぜかいつも扇子を持っている。
よく日本の消費者の消費性向は鳥の群れに例えられる。例えば吉永良正の『「複雑系」とは何か』によると、鳥たちは数多くいる方向へ向かって飛ぶという。このことは消費者の場合にもあてはまる。多くの人々に支持されているブランドの中から選ぶという習性である。つまり、その方が安心なのだ。ここ数年、消費者意識はとにかく安くて、経済的なものを買うという意識が強まっている。一方では高級ブランド世界のように、徹底的に「こだわった」価値創造企業が人気を呼んでいる。例えばルイヴィトンの商品などは、革製品をつくるにも牛一頭から一枚しかとれない皮を使う。そして手の込んだ縫製を施す。しかも徹底した耐久性に配慮すると同時に、品質管理もたしかである。この考え方は洋服作りにおいても同じだ。しかもこれら欧州ブランドに共通していることは、彼らの商品哲学を感じることである。本物志向に見合った要素を備えている。そこには厳格なまでの品質第一主義の考えが貫徹されている。まさにクラフトマソシップに基づいた製造をする。それだけに希少価値を生み出す。売れない日本で売れる理由がここにある。
ニューヨークとワシントンを未曾有のテロがあった「9・11」以降、ジョージ・W・ブッシュ大統領が赤系のネクタイを締める頻度がめっきりと減った。アメリカ人の赤いネクタイ好きはつとに有名で、クリントン政権時のサマーズ財務長官は来日して金融機関関係者に会うときも締めていた。日本では「赤(字)になる」として、金融機関関係者は赤系のネクタイは避けてきたものなのに、だ。ネイヴィーのスーツに白いシャツ、そして赤いネクタイという組み合わせは星条旗を構成する色でもあり、とりわけ赤いネクタイを締めることは強さや挑戦的な無意識を示すアイテムとして好まれてきた。イギリスのユニオンジャックやフランスのトリコロールも同様の色構成なのに、両国の政治リーダーたちは白シャツに赤系のネクタイというコーディネイトをあまり好まない。赤系のネクタイに代わって、黄色と水色系のネクタイがブッシュの襟元に登場するようになった。しかもその様子を仔細に検討するならば、どのようなイベントがあるときにどの色を締めるか、綿密な計算がなされるようになったことが感じられる。会談する相手によっても、ネクタイを替えているほどだ。大雑把ではあるが水色は沈着さや冷静さを、黄色は寛容さを、そして赤はアメリカの尊厳や偉大さを示すアイデンティティとして機能する。
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